お給料やボーナスをもらうと、「所得税」というものが引かれていますよね。 「なんでこんなに引かれるの?」と思ったことはありませんか? 今回は、所得税がどうやって決まるのか、特に「累進課税制度」という仕組みについてわかりやすく解説します。
そもそも所得税って何?
所得税は、私たちが稼いだお金に対してかかる税金です。 会社員のお給料はもちろん、フリーランスの収入、家賃収入、株の配当金など、さまざまな収入に対してかかります。 この税金は国に納めるもので、道路や学校、医療など、私たちの生活を支える公共サービスの財源になっています。
所得税はどうやって計算されるの?
所得税の計算は、次のような流れで行われます:
- まずは収入を全部集める: 1年間に得たすべての収入を集めます
- 経費を引く: 仕事で使ったお金など、必要な経費を引きます。会社員の方もみなし経費が差し引かれています。
- 控除を適用する: 基礎控除や扶養控除など、さまざまな「引き算」をします
- 課税所得を計算: ここまでで引いた後の金額が「課税所得」です
- 税率をかける: この課税所得に税率をかけて税金を計算します
- 税額控除を適用: 住宅ローン控除などがあれば、さらに税金から引きます
累進課税って何?なぜあるの?
「累進課税」とは、稼ぐお金が多い人ほど、税率が高くなる仕組みです。 これは「お金に余裕がある人はより多く社会に貢献してもらおう」という考え方に基づいています。
例えば、月給15万円の人と月給100万円の人がいたとき、同じ10%の税金をかけると、前者は1.5万円、後者は10万円の税金を払うことになります。 15万円から1.5万円引かれると生活が苦しくなる一方、100万円から10万円引かれても、まだ90万円残ります。
そこで「稼ぎが少ない人は税率を低く、稼ぎが多い人は税率を高く」という累進課税の仕組みが生まれました。これにより、それぞれの経済状況に合わせた「公平な」負担を目指しているのです。
日本の所得税率はどうなっているの?
日本の所得税率は、次のように段階的に変わります
- 195万円未満:5%
- 195万円以上~330万円未満:10%
- 330万円以上~695万円未満:20%
- 695万円以上~900万円未満:23%
- 900万円以上~1,800万円未満:33%
- 1,800万円以上~4,000万円未満:40%
- 4,000万円以上:45%
実際の計算例でわかる!累進課税
ここで大事なポイント!多くの人が勘違いしているのですが、年収が上がって「次の税率区分」に入ったからといって、収入全体に高い税率がかかるわけではありません。 区分ごとに分けて計算されるんです。
例えば、課税所得が400万円の場合:
- 195万円までの部分には5%の税率→税金は9万7,500円
- 195万円を超えて330万円までの部分には10%→税金は13万5,000円
- 330万円を超えて400万円までの部分には20%→税金は14万円
合計すると、所得税は37万2,500円になります。
累進課税のいいところ
累進課税の良い点はいくつかあります:
- みんなの負担感が近くなる: お金持ちは多く払い、そうでない人は少なく払うので、負担感が近づきます
- 格差を小さくする効果がある: お金持ちから集めた税金で、様々な福祉サービスが提供できます
- 景気の変動を和らげる: 不景気で収入が減れば自動的に税負担も軽くなるので、家計の安定につながります
- 最低限の生活は守られる: 低所得の人の税負担を軽くすることで、生活に必要な最低限のお金は手元に残ります
累進課税の難点
一方で、課題もあります:
- がんばる気持ちが減るかも?: 「稼ぐほど税金が高くなるなら、そこまで頑張らなくてもいいか」と思う人もいるかもしれません
- 仕組みが複雑: 税率区分がたくさんあると、計算が複雑になります
- 税金対策の差: お金持ちほど税理士さんに相談するなど、節税対策をしやすくなります
- 名目収入が上がっても実質的には同じ: 物価が上がって給料が上がっても、実質的な豊かさは変わらないのに、税率区分が上がってしまうことがあります
世界の累進課税はどうなっているの?
日本の最高税率45%は、世界的に見るとどうでしょうか?
- スウェーデン:約57%
- フランス・ドイツ:約45%
- アメリカ:約37%(州税を別に払います)
- イギリス:約45%
日本は平均的な水準といえますが、国によって控除の仕組みや社会保障制度が違うので、単純に税率だけで比べるのは難しいところです。
所得税以外の税金との関係
所得税だけでなく、住民税も私たちの収入にかかります。最高税率だと、所得税45%+住民税10%で合計55%にもなります。つまり、稼いだお金の半分以上が税金になるというわけです。
また、買い物で払う消費税や、家を持っていれば固定資産税など、私たちは様々な税金を払っています。全体のバランスを考えることも大切です。
まとめ:所得税と累進課税を理解しよう
所得税と累進課税制度は、「能力に応じた負担」という考え方に基づいた仕組みです。複雑に見えますが、基本を理解すれば自分の税金がどう決まるのかがわかります。
また、適切な控除を活用すれば、合法的に税負担を減らすこともできます。 確定申告をする際には、使える控除がないか、よく調べてみるといいでしょう。
日本は高齢化が進み、社会保障費が増える中、税制も変わっていくでしょう。 自分の払っている税金について知ることは、社会を支える一員としての第一歩かもしれませんね。
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