海外取引所・DeFiの完全攻略②DeFi・イールドファーミングの所得計算方法

目次

はじめに:新しい技術にも正しい申告を

仮想通貨

仮想通貨の世界では日々新しい技術や取引方法が登場しています。最近注目されているのが、DeFi(ディーファイ/分散型金融)と呼ばれる領域です。これは、銀行や証券会社といった中央の仲介者を通さずに金融取引を実現する仕組みで、誰もが自由に参加できる点が大きな魅力です。

特に、イールドファーミングやステーキングといった収益獲得手段は、多くの投資家にとって新たな資産運用の選択肢となっています。しかし、新しい取引だからといって税金がかからないわけではありません。むしろ、取引が複雑になる分、税務処理は難しくなります。

本記事では、こうしたDeFiのさまざまな取引について、税務上の扱いをわかりやすく解説します。これからDeFiに本格的に取り組みたい方も、すでに取引をしていて税金が心配な方も、ぜひ参考にしてください。

DEX(分散型取引所)における流動性提供

DEXとは?

UniswapやSushiSwapなどの分散型取引所(DEX)は、ユーザー同士が直接仮想通貨を交換できる仕組みを提供しています。こうした取引所では、取引の流動性を確保するために、ユーザーが仮想通貨を預けて「プール」を作ります。これを「流動性提供」と呼びます。

流動性提供時の税務処理

仮想通貨をプールに預ける段階では、通常は税金はかかりません。なぜなら、これはまだ利益を得たわけではなく、資産の保有形態が変わっただけと考えられるからです。

ただし、後の取引に備えて、提供時点の仮想通貨の価格や数量をしっかり記録しておくことが重要です。この情報がないと、将来の損益計算が困難になります。

提供中に得られる報酬の課税

DEXでは、流動性提供の見返りとして、取引手数料の一部が報酬として分配されます。この報酬を受け取った時点で、所得が発生したとみなされます。

たとえば、UniswapのETH/USDCプールに100万円分の資産を提供し、月間で5,000円相当の報酬を得た場合、その5,000円は「雑所得」として課税対象になります。報酬を受け取ったときの時価(日本円換算)で評価し、確定申告時に記載する必要があります。

流動性を引き上げたときの税務処理

流動性を提供した後、資産を引き出すときには、提供時と引き出し時の価格差から損益を計算します。ここでよく問題になるのが「インパーマネントロス」です。これは、仮想通貨の価格変動によって、単純保有よりも価値が下がる可能性がある損失のことです。

インパーマネントロス自体は、理論的な損失にすぎないため課税対象ではありません。しかし、実際に資産を引き出して損益が確定した場合、その差額に基づいて課税が行われます。

レンディング(貸付)プロトコルの税務

レンディングとは?

CompoundやAaveといったプラットフォームでは、ユーザーが仮想通貨を他のユーザーに貸し出すことができます。貸し出したユーザーは、その見返りとして利息を得ることができます。

貸し出し時点の税務処理

貸し出すだけでは、まだ利益は発生していないため、課税されることはありません。所有権の移転が発生していない、というのが理由です。

利息の受領時

実際に利息を受け取ったとき、もしくは利息の請求権が確定したときに、その金額が課税対象となります。これも「雑所得」に分類され、受け取った時点の市場価格で日本円に換算して評価します。

さらに注意したいのは、利息を再投資する場合でも、受け取ったタイミングで課税されるという点です。利息を再投資してしまうと、現金収入がなくても課税されてしまうことになるので、資金繰りにも注意が必要です。

担保清算時

DeFiのレンディングでは、貸付先が債務不履行になると、担保が自動で売却される場合があります。この場合、強制的に担保資産が売られることになるため、損益が確定し、課税対象となります。たとえ本人の意志によらない取引であっても、税務上は課税を免れません。

ステーキングの税務処理

仮想通貨

ステーキングとは?

仮想通貨のネットワーク運営に参加する代わりに報酬を受け取る仕組みで、Proof of Stake(PoS)というコンセンサス方式に基づくブロックチェーンで広く採用されています。

報酬受領時の課税

ステーキング報酬は、受け取った時点で所得が発生します。報酬として付与された仮想通貨は、その時点の市場価格で評価し、雑所得として申告します。

例えば、報酬として1ETHを受け取り、その時点の価格が30万円だった場合、30万円が雑所得として扱われます。

流動性ステーキングやガバナンス報酬

Lidoのような流動性ステーキングプロトコルでは、stETHなどのトークンが付与されます。これも報酬とみなされ、課税対象となります。ガバナンス参加によって得られるトークンも、価値があるものであれば雑所得として処理が必要です。

エアドロップとガバナンストークンの税務

エアドロップとは?

エアドロップとは、特定の条件を満たすユーザーに対して仮想通貨が無償で配布される仕組みです。新しいトークンの認知度を高める目的などで広く行われています。

税務上の取り扱い

エアドロップで仮想通貨を受け取った場合、受領時の時価で課税されます。一般的には雑所得ですが、配布が一度きりであれば一時所得として扱える場合もあります。

また、特定の行動(トークンの保有、SNSでの拡散など)を条件とする「条件付きエアドロップ」では、その条件を達成した時点で受領が確定したと見なされ、課税タイミングとなります。

ガバナンストークンの注意点

ガバナンストークンとは、プロジェクトの方針に投票する権利などを持つトークンです。議決権だけであれば課税対象ではありませんが、報酬や収益分配の権利がある場合には、付与された時点や配当を受け取った時点で雑所得が発生します。

インパーマネントロスの税務処理

仮想通貨

インパーマネントロスとは?

インパーマネントロスとは、流動性提供中に通貨ペアの価格が変動することで生じる潜在的な損失です。資産を引き出したとき、単純保有よりも損をしている状態がこれにあたります。

税務上の取り扱い

このインパーマネントロスは、それ自体が実現損失ではないため、原則として課税には影響しません。ただし、流動性を引き上げた際に損益が確定すれば、その時点で課税対象となります。

計算時には、提供時と引き上げ時のそれぞれの資産の価値を比較し、実際の増減を記録することが求められます。

複雑なDeFi戦略に関する税務

イールドファーミングの複合戦略

たとえば、CurveでLP(流動性提供)を行いCRVトークンを獲得し、さらにそのCRVをConvexでステーキングすることでveCRVやCVXトークンを得るというような戦略があります。これらは「複合的なイールドファーミング戦略」と呼ばれます。

このような多段階にわたる取引の場合でも、税務上は各ステップごとに評価と課税が必要です。

  • CRVトークンの受領時

  • CRVステーキングで得たveCRVまたは追加報酬の受領時

  • CVXトークンの受領時

それぞれの時点で、その報酬の時価を日本円で換算し、雑所得として記録・申告する必要があります。単に「資産運用中」として一括で扱うことはできません。

レバレッジを用いたファーミング

DeFiでは、資産を担保にして追加で借入れ、その借りた資産も運用に使う「レバレッジファーミング」が存在します。この戦略は利回りが高くなる可能性がある一方で、リスクも高く、税務処理も複雑になります。

税務上のポイントは以下の通りです:

  • 借入によって得た利息収入は所得として課税される

  • 借入にかかる利息やガス代は「必要経費」として控除可能

  • 強制清算された場合、担保資産の処分益・損失が課税対象になる

レバレッジを使って損失が膨らむと、予期しない課税や損失処理に追われることになるため、慎重な取引と綿密な記録が必要です。

クロスチェーンファーミング

最近では、Ethereumだけでなく、BNBチェーンやPolygon、Arbitrumなど複数のチェーンをまたいで運用するケースも増えています。こうした「クロスチェーンファーミング」は税務上、各チェーンごとに取引を独立して把握する必要があります。

また、チェーンをまたぐために「ブリッジ」を利用する際、そのブリッジで支払う手数料は必要経費として処理できますが、チェーン移動そのものが資産の譲渡と見なされて課税される場合もあります。

評価と記録のポイント

DeFi取引に限らず、仮想通貨の税務処理でもっとも重要なのが「正確な記録」と「適正な時価評価」です。税務署にとって重要なのは、納税者がいつ、何を、いくらで得たのかを説明できるかどうかです。

記録しておくべき基本項目は以下の通りです:

  • 取引日時

  • トークンの名称と数量

  • 受領時の市場価格(日本円換算)

  • どの取引(報酬、エアドロップ、利息など)で得たか

  • 手数料やガス代(ETHなどで支払われたものも含む)

これらの記録は、自分自身でエクセルなどに記録しても構いませんが、近年ではDeFiに特化したツールも多数あります。

例:

  • APY.vision:流動性提供の損益管理

  • Zapper:ウォレットの統合管理と税務向けレポート作成

  • CoinMarketCap/CoinGecko:時価取得と履歴管理

ツールを併用することで、手動ミスを減らし、申告時の安心感も増します。

まとめ

DeFi取引は自由で革新的な資産運用の手段を提供してくれる一方で、税務処理の面ではこれまでの常識が通用しないケースも多く見られます。だからこそ、以下の3点が重要です:

  1. 取引の内容を理解すること
    ただ儲かった・損したという感覚ではなく、どの取引がどの所得区分に該当するのかを知ること。

  2. 記録を徹底すること
    「なんとなく」で確定申告すると、後から修正を求められたり、追徴を受ける可能性があります。

  3. 専門家の力を借りること
    自分で対応しきれないと感じたときは、仮想通貨やDeFiに詳しい税理士に相談するのが最善の道です。

久保国際会計事務所では、仮想通貨に精通した税務の専門家が、DeFiを含む高度な取引に対応した税務サポートを行っています。

  • 自動損益計算ツールとの連携

  • 海外ウォレットや複数チェーンの記録支援

  • 正しい申告と節税の提案

複雑な仕組みで不安な方も、まずはお気軽にご相談ください。

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